スーパーやコンビニで食品の原材料表示を見ると、保存料、着色料、甘味料、乳化剤など、さまざまな食品添加物が記載されています。見慣れない名前が並んでいると、「体に悪いのではないか」「できるだけ避けたほうがよいのではないか」と不安になる人も多いでしょう。
一方、日本で使用できる食品添加物は、原則として安全性を評価し、使用できる食品や量などの基準を定めたうえで認められています。そのため、「食品添加物が入っている食品はすべて危険」と考えるのは正確ではありません。
この記事では、食品添加物とは何か、日本で悪いといわれている理由、安全性を確保する仕組み、食品表示の見方についてわかりやすく解説します。
食品添加物って何?
食品添加物とは、食品を製造・加工・保存する過程で、特定の目的のために使用される物質です。食品の保存性を高めたり、色や香りを整えたり、食感を保ったりするために使われています。
たとえば、食品の腐敗や変質を防ぐ保存料、色合いを整える着色料、甘みを加える甘味料、酸化を防ぐ酸化防止剤などがあります。豆腐を固める凝固剤や、中華麺の食感を作るかんすい、食品に栄養を補うビタミンやミネラルも、使用目的によっては食品添加物に含まれます。
食品添加物は、単に見た目や味をよくするためだけのものではありません。食中毒の原因となる微生物の増殖を抑えたり、品質の劣化を防いだりするなど、食品の安全性や流通を支える役割も担っています。
食品添加物にはどのような種類があるのか
日本で使用が認められている食品添加物は、制度上、主に次のように分類されています。
- 指定添加物:安全性と有効性を確認したうえで、国が使用を認めた添加物です。
- 既存添加物:長年使用されてきた実績があり、例外的に使用が認められている天然由来の添加物です。
- 天然香料:動植物から得られ、食品に香りを付けるために使用されるものです。
- 一般飲食物添加物:通常は食品として食べられているものを、着色や風味付けなどの目的で使用するものです。
食品添加物には人工的に合成されたものだけでなく、植物、果物、海藻、微生物などに由来するものもあります。ただし、天然由来だから必ず安全で、人工的に作られたものだから危険というわけではありません。安全性は由来だけではなく、物質の性質や摂取量によって判断する必要があります。
食品添加物が使われる主な目的
食品添加物には、それぞれ明確な使用目的があります。代表的な目的は次のとおりです。
- 食品の腐敗や変敗を防ぎ、保存期間を延ばすこと
- 食中毒の原因となる微生物の増殖を抑えること
- 食品の色、香り、味を整えること
- 乳化、凝固、膨張などによって食感や形を作ること
- 油脂や食品成分の酸化を防ぐこと
- ビタミンやミネラルなどの栄養成分を補うこと
- 品質を一定に保ち、安定した状態で流通させること
保存料を使用しない食品でも、温度管理や消費期限が適切でなければ、微生物による食中毒の危険性が高まる場合があります。食品添加物を減らすことだけが安全につながるわけではなく、食品の保存方法や衛生管理も含めて考えることが大切です。
日本で食品添加物が悪いといわれている理由
食品添加物が悪いといわれる背景には、複数の理由があります。
化学物質のような名前に不安を感じやすい
原材料表示には、ソルビン酸、亜硝酸ナトリウム、アスパルテームなど、日常生活ではあまり見かけない名称が記載されています。こうした名前から強い薬品を連想し、危険だと感じる人がいます。
しかし、聞き慣れない名称であることと、通常の使用量で危険であることは同じではありません。食品に含まれる成分の安全性は、名前の印象ではなく、毒性と実際に摂取する量の両方から判断されます。
過去に安全性が見直された添加物がある
食品添加物のなかには、研究や評価の進展によって使用基準が変更されたり、使用が認められなくなったりしたものがあります。こうした事例から、「現在認められているものも将来は危険と判断されるのではないか」という不安が生まれることがあります。
科学的な評価は、新しい研究結果や摂取状況に応じて見直されます。見直しが行われること自体は、すべての添加物が危険という意味ではなく、安全管理を継続している結果でもあります。
「海外では禁止」という情報が広まりやすい
インターネットやSNSでは、「日本では使用できるのに海外では禁止されている」という情報が注目されることがあります。しかし、国によって食品添加物の分類、使用目的、表示方法、申請状況が異なります。
ある国の使用リストに載っていないことが、必ずしも危険性を理由とした禁止を意味するわけではありません。使用できる食品や上限量だけが異なる場合もあるため、個別の制度や理由を確認する必要があります。
加工食品を食べる機会が増えている
食品添加物は、菓子、清涼飲料、加工肉、インスタント食品、冷凍食品など、さまざまな加工食品に使われています。そのため、加工食品の食べすぎによる栄養の偏りが、食品添加物の問題として語られることがあります。
加工食品中心の食生活では、商品によって塩分、糖分、脂質などを多く摂取する可能性があります。この場合に注意したいのは、食品添加物だけではありません。食品全体の栄養成分や食べる量、食生活のバランスを確認する必要があります。
危険性と摂取量が分けて考えられていない
特定の物質を大量に与えた実験結果だけを取り上げて、「食品に少しでも入っていれば危険」と説明されることがあります。しかし、健康への影響を考える際は、その物質にどのような性質があるかだけでなく、人が実際にどの程度摂取するかが重要です。
食品に含まれる成分は、食品添加物に限らず、量によって体への影響が変わります。安全性について考えるときは、実験で使用された量と、通常の食生活で摂取する量を区別する必要があります。
日本では食品添加物の安全性をどのように確認しているのか
日本では、新たな食品添加物の使用を認める際、毒性試験などの科学的なデータに基づいて、人の健康に与える影響が評価されます。
評価では、急性毒性、長期間摂取した場合の影響、発がん性、生殖や次世代への影響、遺伝子への影響などが検討されます。必要に応じて、体内でどのように吸収、分解、排出されるかについても調べられます。
そのうえで設定される指標の一つが、ADIと呼ばれる一日摂取許容量です。ADIは、その量までなら、人が生涯にわたって毎日摂取し続けても健康への悪影響がないと考えられる一日当たりの量です。
一般的には、動物試験などで健康への悪影響が確認されなかった量を基礎として、個人差や動物と人との違いを考慮した安全係数を用いてADIを設定します。さらに、実際の摂取量がADIを超えないよう、使用できる食品や使用量の基準が定められます。
食品添加物は、使用を認めて終わりではありません。流通している食品をもとに実際の摂取量を推定する調査や、新しい科学的知見に応じた再評価も行われています。
食品添加物は本当に危険なのか
日本で使用が認められている食品添加物は、定められた規格や使用基準を守ることを前提として、安全性が確保される仕組みになっています。そのため、食品添加物が使われているという理由だけで、その食品が直ちに危険とはいえません。
ただし、「国が認めているので、どのような食べ方をしてもまったく問題がない」という意味でもありません。食品添加物に限らず、同じ食品や飲料を極端に多く摂取する食生活は避けたほうがよいでしょう。
また、体質によっては、特定の添加物でアレルギーに似た症状や過敏反応が起こる場合があります。ぜんそくなどの持病がある人、乳幼児、医師から食事について指示を受けている人は、必要に応じて医師や管理栄養士へ相談することが大切です。
「無添加」なら必ず安全とは限らない
「無添加」という表示を見ると、食品添加物をまったく使用していない食品だと受け取りやすいかもしれません。しかし、実際には特定の添加物を使用していないという意味で表示されている場合があります。
また、食品添加物を使っていなくても、糖分、塩分、脂質が多い食品はあります。反対に、保存料を使わないことで消費期限が短くなり、開封後の保存状態によっては傷みやすくなる食品もあります。
無添加という言葉だけで健康的かどうかを判断せず、原材料、栄養成分、消費期限、保存方法などを総合的に確認しましょう。
食品添加物の表示はどのように見ればよいのか
加工食品の原材料名欄では、原材料と食品添加物がスラッシュ記号などで区分されていることがあります。スラッシュより後ろに記載されているものが食品添加物です。ただし、商品によっては改行や別欄によって区分される場合もあります。
食品添加物は、原則として物質名で表示されます。保存料、甘味料、着色料、酸化防止剤など、一部の添加物については、「保存料(ソルビン酸)」のように用途名と物質名が併記されます。
一方、複数の物質を組み合わせて同じ目的で使用するものは、乳化剤、膨張剤、香料、酸味料、調味料などの一括名で表示できる場合があります。また、製造工程で除去されるものや、原材料から持ち越されても最終食品では効果を発揮しないものなど、一定の条件で表示が省略される場合もあります。
表示が長いことだけで危険性を判断するのではなく、「何の目的で使われているか」「普段どの程度食べているか」という視点で確認するとよいでしょう。
食品添加物と上手に付き合うためのポイント
食品添加物を必要以上に怖がる必要はありませんが、気になる場合は自分の考え方に合った商品を選ぶことができます。次のポイントを意識すると、無理なく食生活を整えられます。
- 原材料名と食品添加物の区切りを確認します。
- 同じ種類の商品を比較し、原材料や栄養成分の違いを確認します。
- 加工食品だけに偏らず、野菜、肉、魚、豆類などを組み合わせます。
- 塩分、糖分、脂質、エネルギー量もあわせて確認します。
- 一つの食品や飲料を毎日大量に摂取し続けないようにします。
- 体調に異変を感じた場合は、食べた商品や原材料表示を記録します。
- 「天然」「無添加」という言葉だけで安全性を判断しないようにします。
食品を選ぶ際に大切なのは、食品添加物を完全に避けることではなく、食品全体の内容と食生活のバランスを見ることです。自炊と加工食品を生活に合わせて組み合わせるなど、継続できる方法を選びましょう。
用語解説
- 食品添加物
- 食品の製造、加工、保存などの目的で、食品に加えられたり使用されたりする物質です。
- 指定添加物
- 安全性と有効性を確認したうえで、国が使用を認めた食品添加物です。
- 既存添加物
- 長年使用されてきた実績などをもとに、使用が認められている天然由来の添加物です。
- ADI(一日摂取許容量)
- 人が生涯にわたり毎日摂取し続けても、健康への悪影響がないと考えられる一日当たりの摂取量です。通常、体重1キログラム当たりの量で示されます。
- 無毒性量
- 動物試験などにおいて、健康への悪影響が確認されなかった最大の量です。ADIを設定する際の基礎として使われます。
- 安全係数
- 動物と人との違いや人による感受性の差など、不確実な要素を考慮して安全性を確保するための係数です。
- 使用基準
- 食品添加物について、使用できる食品、使用目的、使用量の上限などを定めた基準です。
- キャリーオーバー
- 食品の原材料に使用されていた添加物が最終食品にも残っているものの、その食品では添加物としての効果を発揮しない状態です。一定の条件では表示が省略されます。
- 加工助剤
- 食品の製造工程で使用された後に除去されるものや、最終食品にほとんど残らないものなどです。一定の条件では表示が省略されます。
- リスク評価
- 食品に含まれる物質について、どの程度の量を摂取すると健康に影響する可能性があるかを科学的に評価することです。
おわりに
食品添加物とは、食品の保存性を高めたり、味、色、香り、食感を整えたりするために使われる物質です。なかには、腐敗や食中毒を防ぎ、食品を安全に流通させる重要な役割を持つものもあります。
日本で食品添加物が悪いといわれている理由には、見慣れない名称への不安、過去の見直し事例、海外との制度の違い、加工食品に対する健康上の懸念などがあります。しかし、食品添加物が使われていることだけを理由に、すべての食品を危険と判断することはできません。
食品添加物について考えるときは、「入っているか、いないか」だけではなく、使用目的、摂取量、食べる頻度、食品全体の栄養バランスを見ることが重要です。正しい知識を身につけ、表示を確認しながら、自分や家族の生活に合った食品を選びましょう。